学校 放送劇・舞台劇 脚本集
宮沢賢治名作童話
目次
成長する銀河系
平野直編『宮沢賢治・名作童話 学校放送劇集』新編によせて
原 子 朗
この本の初版(宝文館、昭和31年9月1日発行)を今、懐かしく手にしながら書きはじめている。宮沢家でだった。当時の客間の縁側に、賢治作品では「S博士」こと佐藤隆房(宮沢家の主治医だった)さんも、どこかへの往診の帰りらしく靴は庭先に向けて体をひねって腰かけたままだったが、清六さん(宮沢賢治の実弟 2001年6月ご逝去)と若造だった私との会話の途中から加わってこられたことまで覚えている。
私の手には、清六さんに達筆の著名入りで送られてきたばかりの、平野さんの本のページが開かれていた。それをちらと見ながら「苦心の産物、いい本です」とS博士が言い、清六さんが頷かれた場面まで覚えている。
画期的な賢治研究の先鞭だったS博士の『宮沢賢治』(昭17、冨山房)はよく読まれていたものの平野作品は実作品で賢治作品を再創造してみせた(単なる影響を越えた)試みの先鞭の一つであっただけに、私の記憶は今も鮮明なのだろう。しかも「十年がかり」といえば、平野さんへの賢治作品の転位、影響の時期は恐らく戦争終結の前後、あるいはそれ以前だったろうと推算される。
私事を言うべき場所ではないが、『新・宮沢賢治語彙辞典』の全項目を徹底的に検討し直し、改訂して約二〇〇の新項目も増補するのに、この八年間心血を注いで今漸くその仕事を終った私には、当時の平野さんの苦心が人ごとでなくよくわかるのである。
この本の冒頭二編は賢治の「銀河鉄道の夜」と結びつく「双子の星」の再創造(「空の大鳥と赤目のさそり」=〈ふたごの星〉第一話、「ふたごの星と箒星」=〈同、第二話〉)から成っている。
実はことし二〇〇八年八月一日発行の米天文誌「アストロフィジカルジャーナル」に発表された新学説の一つに、京都大学の基礎物理学研究チームによる報告がある。銀河の「石炭袋」(現世から異界への通路)と賢治が呼ぶブラックホールの双子が、互いに追っかけるように近づき、回り始めて巨大化し成長していると言う内容である。驚いた私は早速、私の辞典の「石炭袋」項にその紹介を加えたのだが、ここでその新説を借りて言うと、平野脚色の「ふたごの星」は五十余年前「双子の星」に近づき、回りはじめて一体化し、成長をはじめていた、しかも賢治を追っかけながら一体化している二十二編の平野作品のすべてにそれは言えるのではないか、と私は思う。
(はら・しろう、宮沢賢治イーハトーブ館長)
目 次
まえがき 成長する銀河系 原 子 朗
空の大鳥と赤眼のさそり
ふたごの星と箒星
セロ弾きのゴーシュ
山男の四月
ペン・ネンネンネン・ネネムの伝記
なめとこ山の熊
どんぐりと山猫
銀河鉄道の夜
祭の晩
山なし(朗読用)
貝の火
北守将軍と三人兄弟の医者
風の又三郎
雁の童子
よだかの星
かしわ林の夜
雪渡り
水仙月の四日
とっこべとら子
グスコーブドリの伝記
虔十公園林
楽 譜
星めぐりの歌/南京さん/すずらんの歌
貝の火/風の又三郎/さようなら
あとがき
平野直編『宮沢賢治・名作童話 学校放送劇集』新編によせて
原 子 朗
この本の初版(宝文館、昭和31年9月1日発行)を今、懐かしく手にしながら書きはじめている。宮沢家でだった。当時の客間の縁側に、賢治作品では「S博士」こと佐藤隆房(宮沢家の主治医だった)さんも、どこかへの往診の帰りらしく靴は庭先に向けて体をひねって腰かけたままだったが、清六さん(宮沢賢治の実弟 2001年6月ご逝去)と若造だった私との会話の途中から加わってこられたことまで覚えている。
私の手には、清六さんに達筆の著名入りで送られてきたばかりの、平野さんの本のページが開かれていた。それをちらと見ながら「苦心の産物、いい本です」とS博士が言い、清六さんが頷かれた場面まで覚えている。
画期的な賢治研究の先鞭だったS博士の『宮沢賢治』(昭17、冨山房)はよく読まれていたものの平野作品は実作品で賢治作品を再創造してみせた(単なる影響を越えた)試みの先鞭の一つであっただけに、私の記憶は今も鮮明なのだろう。しかも「十年がかり」といえば、平野さんへの賢治作品の転位、影響の時期は恐らく戦争終結の前後、あるいはそれ以前だったろうと推算される。
私事を言うべき場所ではないが、『新・宮沢賢治語彙辞典』の全項目を徹底的に検討し直し、改訂して約二〇〇の新項目も増補するのに、この八年間心血を注いで今漸くその仕事を終った私には、当時の平野さんの苦心が人ごとでなくよくわかるのである。
この本の冒頭二編は賢治の「銀河鉄道の夜」と結びつく「双子の星」の再創造(「空の大鳥と赤目のさそり」=〈ふたごの星〉第一話、「ふたごの星と箒星」=〈同、第二話〉)から成っている。
実はことし二〇〇八年八月一日発行の米天文誌「アストロフィジカルジャーナル」に発表された新学説の一つに、京都大学の基礎物理学研究チームによる報告がある。銀河の「石炭袋」(現世から異界への通路)と賢治が呼ぶブラックホールの双子が、互いに追っかけるように近づき、回り始めて巨大化し成長していると言う内容である。驚いた私は早速、私の辞典の「石炭袋」項にその紹介を加えたのだが、ここでその新説を借りて言うと、平野脚色の「ふたごの星」は五十余年前「双子の星」に近づき、回りはじめて一体化し、成長をはじめていた、しかも賢治を追っかけながら一体化している二十二編の平野作品のすべてにそれは言えるのではないか、と私は思う。
(はら・しろう、宮沢賢治イーハトーブ館長)
目 次
まえがき 成長する銀河系 原 子 朗
空の大鳥と赤眼のさそり
ふたごの星と箒星
セロ弾きのゴーシュ
山男の四月
ペン・ネンネンネン・ネネムの伝記
なめとこ山の熊
どんぐりと山猫
銀河鉄道の夜
祭の晩
山なし(朗読用)
貝の火
北守将軍と三人兄弟の医者
風の又三郎
雁の童子
よだかの星
かしわ林の夜
雪渡り
水仙月の四日
とっこべとら子
グスコーブドリの伝記
虔十公園林
楽 譜
星めぐりの歌/南京さん/すずらんの歌
貝の火/風の又三郎/さようなら
あとがき
内容説明
22編の賢治童話の脚本を集録。音楽や効果などを具体的に記し、校内放送や舞台劇に活用させることができます。